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和歌山地方裁判所 平成10年(わ)101号

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官大谷晃大、弁護人木村義人各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、和歌山市禰宜一四〇番地に居住し、和歌山市内において、消費者金融業、飲食業及び麻雀貸卓業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  平成五年分の総所得金額が七四一九万九一四六円で、これに対する所得税額が三二〇九万四五〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外するなどして所得の一部を秘匿した上、平成六年三月一五日、和歌山市湊通丁北一丁目一所在の所轄和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が一二六三万三九〇五円で、これに対する所得税額が二二六万九二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税二九八二万五三〇〇円を免れた

第二  平成六年分の総所得金額が三六四一万九二五五円で、これに対する所得税額が一一〇三万三五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の手段により所得の一部を秘匿した上、平成七年三月九日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が一四〇九万九一一六円で、これに対する所得税額が二一七万五〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税八八五万八五〇〇円を免れた

第三  平成七年分の総所得金額が九七二六万一九〇一円で、これに対する所得税額が四〇九〇万四〇〇〇円であるにもかかわらず、前同様の手段により所得の一部を秘匿した上、平成八年二月二九日、前記和歌山税務署において、同税務署長に対し、平成七年分の総所得金額が一二〇六万六五二四円で、これに対する所得税額が一三七万四六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税三九五二万九四〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目-かっこ内は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠の甲乙の番号である。)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官(乙三、四、七)及び大蔵事務官(乙八)に対する各供述調書

一  吉岡千鶴の検察官に対する供述調書(甲四〇)

一  大蔵事務官作成の捜査報告書(甲九)及び査察官調査書(甲一〇ないし一三、一五ないし二六)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲三七)

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲二七)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲三)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲三一)

一  和歌山税務署長作成の「証明書」と題する書面(甲六)

判示第二及び第三の各事実について

一  外濱明治の検察官に対する供述調書(甲四一)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲一四、二九、三〇)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲四)及び査察官調査書(甲二八)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲三二、三四)

一  和歌山税務署長作成の「証明書」と題する書面(甲七)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲五)

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲三三、三五)

一  和歌山税務署長作成の「証明書」と題する書面(甲八)

(法令の適用)

罰条 いずれも所得税法二三八条一項、二項(情状による)

刑種の選択 懲役刑と罰金刑の併科

併合罪の処理 平成七年法律第九一号(以下「新法」という。)附則二条二項により刑法四五条前段、懲役刑については四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)、罰金刑については刑法四八条二項

労役場留置 新法附則二条二項、三項により刑法一八条

刑の執行猶予 新法附則二条二項、三項により刑法二五条一項(懲役刑について)

(量刑の理由)

本件は、消費者金融業等を営む被告人が、三年間にわたって所得税を脱税したという事案である。

被告人は、昭和五四年ころに独立して消費者金融業を営むようになったが、納税のための支出を省いて新規の貸付資金等に回して事業を拡大するとともに、将来の大口の貸倒れにも備えようと考え、また、正しい所得金額を申告すれば同業者の間で突出してしまうという事情もあり、そのころから実際の所得金額よりも少ない金額で確定申告を行うようになり、その後も同様の過少申告を続けて本件各犯行に及んだもので、利己的な動機に特段酌むべき点は認められず、本件は、長期間にわたる脱税行為の一部とも評価できるものである。また、本件の犯行態様は、消費者金融業の主たる収入源である利息収入を実際の半分くらいになるように押えるとともに、これを隠蔽するために、貸倒金を計上せず、支払利息も過少に計上するなどした上で内容虚偽の申告書を作成し、税務署長に提出したというものであるところ、本件による脱税額は三年分の合計で約七八〇〇万円と個人事業者としては少なくない上、脱税率も三年分を通じて約九三パーセントと極めて高率であり、以上によれば、犯情は悪質である。

他方、本件における所得秘匿の手段はさして巧妙なものではなく、被告人は、国税局の査察を受けるや、素直に事実を認め、調査にも協力していること、所得税の本税については全て納付済みであり、延滞税、重加算税についても一部は納付済みで、未納付のものについても今後分割して支払っていく予定であること、被告人は本件を反省し、今後二度とこのような脱税行為はしない旨誓うとともに、反省の意を表明するために法律扶助協会に金一五〇万円の贖罪寄付をしていること、また、これまでに個人経営であった消費者金融業等を法人化した上で、顧問税理士を頼んで経理の明瞭化を図っていること、業務上過失傷害による罰金前科以外に前科はなく、本件を別にすれば仕事も真面目にしていたこと、などの被告人のために酌むべき事情も認められるので、被告人を主文掲記の懲役刑及び罰金刑に処した上で、懲役刑については刑の執行を猶予するのを相当と認めた。

(検察官の科刑意見 懲役一年及び罰金二〇〇〇万円)

(裁判官 柴山智)

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